11 Dec 2018

2019年 国内IT市場の主要10項目を発表

Japan, 2018年12月11日 - IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社(所在地:東京都千代田区九段北1‐13‐5、代表取締役社長:竹内正人、Tel代表:03-3556-4760)は、2019年の国内IT市場において鍵となる技術や市場トレンドなど主要10項目を発表しました。

IDCでは、前回のPredictions(2017年12月発表)において、クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術からなる第3のプラットフォームが「第2章」に入っているという見方を示しました。第3のプラットフォームの「第1章」が各技術の試行であったとすると、「第2章」はこれらの技術を活用したビジネスの変革や新規ビジネスの創出、換言すればイノベーションの創出、デジタルトランスフォーメーション(DX)の実現を目指したものです。世界中の企業では競争力の強化、新たな成長機会の発見と参入のために、DXの実現を競っており、それは国内企業においても例外ではありません。企業のDXに向けた取り組みの強化/拡大は、クラウドやビッグデータ/アナリティクスといった第3のプラットフォームの技術、およびAI(Artificial Intelligence:人工知能)、IoT(Internet of Things)といったイノベーションアクセラレーターに対する支出を拡大させています。

しかしDXの実現に至る道は平たんではなく、進化する技術への対応、デマンドサイド/サプライサイド双方における人材不足の解消、DXに欠かせない社内外データの有効な活用に向けた道筋、DXにふさわしいITインフラの構築など、さまざまな課題が存在しています。こういった課題を克服し、DXを実現に導くためには、デマンドサイド(企業)/サプライサイド(ベンダー)双方が、これまでの成功体験にこだわらず、「自己変革」することが必要になります。

IDCの国内IT市場Top 10 Predictionsは、特にサプライサイドに焦点をあて、DX時代のリーディングベンダーになるためにどのような自己変革を行うべきかをまとめたものです。以下が10項目とその簡単な説明です。



1. 業務の卓越性などDXの現実的な解を求める企業が急増し、「DX先進企業」と共にデジタル関連支出の増加を牽引する。DXに取り組む企業は増加するが、実証実験(Proof of Concept:POC)段階にとどまる企業、取り組みが効果を生まない企業も少なからず存在する。結果として「変革」「イノベーション」をあきらめるケースも多いが、そういった企業でもデジタル化への歩みを止めることはできない。結果として、デジタル化の目的がより分かりやすく、効果が測定しやすい既存業務プロセスの効率性追求に取り組む企業が増えていく。こういった企業が第3のプラットフォームやイノベーションアクセラレーターなどデジタル関連支出の拡大を下支えする。変革やイノベーションを追求するデジタル先進企業の支出パターンや規模とは異なるものの、ITサプライヤーにとっては「パッケージ化されたデジタルソリューション」のビジネス機会が広がる。

2. 海外で拡大する「働き方の未来(Future of Work)」の実現に向けた取り組みに刺激され、国内でもワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの三位一体の改革が始動する。働き方の未来(Future of Work)の目的は、持続可能な競争優位性を獲得することであり、ワークカルチャー、ワークスペース、ワークフォースの三位一体の変革。企業の効率性向上と、顧客に優れたエクスペリエンスを提供するといった優位性につながる。ただし働き方改革を続けることが働き方の未来に自動的につながるわけではない。ITサプライヤーは、自らが働き方の未来の先導者になることを通じて、必要なITソリューションを開発すべきである。

3. クラウドの適材適所が助長した複雑化の課題を解決し、DXを推進するCoEの重要性が高まる。クラウドの適材適所での利用によって「サイロ化」を助長。結果として、システムごとに見ると効果(コストの最適化など)はあるが、運用管理の複雑化による課題が顕在化(ガバナンス/リスク/コンプライアンス、IT/ビジネス全体から見た「最適化」およびDX推進の障壁)。こういった中で企業組織全体としてのクラウド最適化を実現するためにCoE(Center of Excellence)の重要性が高まる。CoEとは、新技術、導入/運用ノウハウ、ITアーキテクチャ、産業ノウハウといった知見の集約とその活用を促す取り組みであり、ビジネス目標を達成するためのハブとなるイニシアティブである。ITサプライヤーは、マルチクラウド/ハイブリッドクラウドにおける自社の製品/サービスのポジションを明確化すべきである。

4. データのマネタイズ実現に向け、2019年は関係性が複雑化するステークホルダー間でIoTとデータエコシステムの融合が加速する。IoTを顧客向けの製品/サービスの付加価値創出や新たなビジネスに役立てる用途に使う企業が増えるにつれ、IoTソリューションのステークホルダーが増加し、ステークホルダー同士を結び付ける「エンゲージメントポイント(Engagement Point)」も増加している。IoTソリューションの提供側は、 エンゲージメントポイントの増加によって複雑化、多様化する利用側の課題やニーズを正確に把握し、サービス品質にリアルタイムに反映させる必要がある。さらにこの結果、各ステークホルダーが基幹系システムで扱うデータの管理/活用も複雑化する。したがって、SoR(Systems of Record)の分野においても、データを一元的かつ効率的に扱う仕組みを整えることが肝心になる。ITサプライヤーは、複数のステークホルダーのIoTデータ/基幹系システムのデータを一元的に管理できるプラットフォームの構築と、企業が部門間でデータをシームレスに扱えるようにすることを目的とした組織変革アドバイザリーを提供することが重要になる。

5. 音声とテキストによる対話型AIがNLPの向上によってエンタープライズに普及し、新たなCX(顧客エクスペリエンス)の付加価値を再定義する。国内のチャットボット利用率が、顧客サポート/サービスの自動化、対話型教育などのデジタルアシスタントなどの目的で上昇している。主なユースケースは金融/保険などでの顧客からの商品問い合せ、eコマースでの顧客サポート、社内問い合せ業務など。一方、スマートスピーカーの普及に代表されるようなスマートホームデバイスの市場拡大や、自然言語処理(NLP)の技術も進歩。こういった背景から、Collaboration/CRM/ERP/SCMなどの業務アプリケーションや、業種ソリューションへの、NLPを利用した音声/テキストベースの対話型AIアシスタント適用が普及する。ITサプライヤーは、ベンチャー/大企業に関わらず、音声認識が可能なAIの最新技術を持つ企業とのアライアンスなどを進めるべき。

6. 2020年の東京オリンピック/パラリンピックに向けたセキュリティ人材の不足が深刻化し、AIによる対策の自動化が加速する。世界から注目される国際イベントでは、過去にもサイバー攻撃が多発している。サイバー攻撃は高度化し、被害は大規模化の一途をたどっており、ランサムウェア攻撃やファイルレスマルウェア攻撃など攻撃方法も高度化。国内では、サイバーセキュリティ基本法の施行によって重要社会インフラ分野での取り組みが促進されているが、経済産業省が2016年に実施した調査では、2020年には、20万人近くの情報セキュリティ人材が不足する見込みである。深刻な人材不足による被害の拡大や復旧遅延といった大きな問題が生じる恐れがある。このため、AIを活用したセキュリティシステムによるセキュリティプロセスの自動化が加速するとみられる。ITサプライヤーは、AIを活用した脅威インテリジェンスによる製品連携ソリューションを訴求すべきである。

7. スマートフォン接続型のAR/VRヘッドセットが複数登場し、軽量化と低コスト化を実現し、ライトユース層を中心にビジネスでの利用が拡大する。2018年にはスタンドアロン型VRヘッドセットが多数登場した。2019年はスマートフォンなどを利用したケーブル型AR/VRヘッドセットが複数登場する。スマートフォンを利用したケーブル型はヘッドセットの軽量化やコスト削減などの恩恵が大きい。さらにヘッドセットとの接続端子はVirtualLinkやDisplayPort Alternate Modeなどの標準化が進行している。こういったAR/VRデバイスの進化は、エンタープライズ用途にも徐々に広がることが期待される。ITサプライヤーは、そのユースケースに関して研究を進めるべきである。

8. DX実現を支援するサービスはプロジェクト型から継続/反復支援型へと発展し、「マネージド化」が進行する。DXには1つの絶対的な解が存在するわけではなく、アジャイル開発やリーン手法の活用を前提とし、小規模な試行錯誤を繰り返しつつ、効果的な取り組みを拡大するアプローチが必要との認識が高まっている。このため、外部のサービスベンダーに対しても、個別プロジェクト単位ではなく、こうした取り組みを継続的に支援するサービスに対する需要が高まる。こうしたサービスでは、デザインアプローチを活用し、顧客と共にアイデアの創出からその実装までを行う「ハンズオン(手を動かす)」型の支援が、より高い価値を提供できる場合が多い。ハンズオン型支援は、顧客企業の人材育成や、CoEの機能提供の受け皿としても発展していく。ITサプライヤーは、継続/反復的支援におけるオファリングや契約体系、体制など、ビジネススキームの組み立てを急ぐべきである。

9. 国内大手企業におけるDevOpsが本格的に始まり、クラウドネイティブアプリケーションの開発が加速する。国内ではDevOpsに取り組む企業が増加傾向にあり、IT組織全体で実践している例も出始めている。2019年も引き続きDevOpsの利用は増加する見込みである。さらにDX向けのアプリケーション開発に向けDX推進部門とDevOpsチームが連携し、クラウドネイティブアプリケーションの開発が2019年以降に加速するとみられる。ITサプライヤーは、顧客のDevOps支援サービスに向けてサービスモデルを改革すべきである。

10. DXへの取り組みがエンタープライズインフラの高速/大容量テクノロジーの導入を加速する。国内エンタープライズインフラ市場は縮小傾向にある中、データ基盤としての機能強化のための新テクノロジーの導入が進む。オールフラッシュアレイ(AFA)へのNVMe搭載、アクセラレーテッドコンピューティングの普及がその例である。また、併せてインフラに対する支出モデルの多様化も進み、Software-Defined化とコンバージェンス化、CAPEXモデルからOPEXモデルへのシフト、オンプレミスの従量課金サービスの利用などが進んでいく。ITサプライヤーは、多様な支出モデルの提供能力を確立すべきである。



IDC Japan リサーチバイスプレジデントの寄藤幸治 は、「DXに取り組む企業が増えるなかで、その目的、アプローチ、体制などが多様化する。ITサプライヤーは、そういった『DXの在り方の多様性』に対応できるように準備するとともに、自らのDXも新たな段階に進めるように努力すべきである」と述べています。



今回の発表はIDCが発行したJapan IT Market 2019 Top 1 0 Predictions にその詳細が報告されています。本レポートは、2019年の国内IT市場で注目すべき動向についてIDC Japanのアナリストが議論し、主要な10項目の事象を取り上げ、考察/展望としてまとめるとともに、ITサプライヤーへ向けた提言を行っています。

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