Leadership Strategies May 1, 2026 1 min

日本の2.1兆円規模のITモダナイゼーションの波:レースはすでに始まっている

レガシーシステムが稼働し続けるたびに、競合他社が優位を築いていく。日本の2.1兆円規模のITモダナイゼーション市場は待ってくれない—変革を急ぐ企業も同様である。

主要指標

1,304億円 — ITモダナイゼーションサービス市場規模(2025年)

10.2% — 年平均成長率(2025〜2030年)

2,123億円 — 市場規模予測(2030年)

約80% — 依然としてレガシーシステムを稼働させている大企業・中堅企業の割合

なぜ日本は世界を上回るペースで成長しているのか

日本のITサービス市場は2024年から2029年にかけて年平均6.6%成長すると予測されており、世界平均の3.6%のほぼ2倍にあたる。その背景には構造的な要因がある。日本は特有の重いレガシー資産を抱えている——長年にわたる汎用機(メインフレーム)やオフィスコンピュータなどへの投資、複雑な個別開発システム、そしてそれらを長年維持してきた人材がある。今、これら三つに起因する課題が重なり合う中、ITモダナイゼーションが避けられないものになっている。

富士通メインフレームのサポート終了

2022年、富士通はメインフレームおよびUNIXサーバー製品の販売・サポートの2030年前後の終了を発表した。この発表により、1,000社以上の企業が後戻りのできないカウントダウンに入り、日本市場全体でITモダナイゼーションの取り組みが加速している。

AIへの対応という至上命題

AIの活用には、緊密に統合されたデータパイプラインと近代的なビジネスプロセス基盤が前提となる——まさにレガシーシステムはこれらの実現を阻む要素となっている。AI競争力を維持したい企業にとって、ITモダナイゼーションはもはや選択肢ではない。

人口動態の圧力

日本のレガシーシステムを構築・維持してきた世代のエンジニアが退職しつつある。そのノウハウや技術が失われてしまう前に、知識とインフラを移行できる時間は着実に縮まっている。

モダナイゼーションへの三つのアプローチ

IDCはITモダナイゼーションサービスを三つの実行タイプに分類しており、それぞれがサービス企業に異なる意味をもたらす。

リホスト

既存のアプリケーション資産を維持しながら、レガシー以外のプラットフォームへリフト&シフトする。予算や移行期間に制約を抱える企業にとっての入口となる手法である。

リライト

ビジネスロジックを変えずに、レガシーのソースコードを現代的な言語に変換する。管理された変革のための中間的なアプローチである。

リビルド

プロセス、データモデル、アーキテクチャをゼロから再定義する。最も高い価値をもたらす一方、最も複雑なアプローチでもある。

短期的には、リホストはリビルドに次ぐ2番目に大きなセグメントであり、メインフレームなどのEOL(End of Life)に対し早急な対応を要するに企業による支出が市場を牽引している——ただし既に成熟期を迎えており、今後はマイナス成長が予測されている。中長期的な成長機会は、アプリケーションのモダナイゼーション——リライト、リファクタリング、マイクロサービス化やクラウドネイティブアーキテクチャの採用——にある。

国内ITモダナイゼーションサービス市場 支出額予測: 2025年~2030年

Source: IDC Japan, 2/2026

企業がサービスプロバイダーに本当に求めているもの

IDCの調査では、レガシー依存度が相対的に高い大企業・中堅企業は、単なる技術的な実行だけを求めているのではなく、変革のパートナーを求めていることがわかった。セキュリティは基本的な前提として期待される一方、上位のニーズにはビジネスプロセス変革の支援やクラウド活用支援が挙がっている。

需要のシグナルはセクターによっても明確に異なる。

金融サービス

クラウドネイティブなアプリケーション開発能力、すなわち近代的なインフラ上で素早くイノベーションを起こす能力を優先している。

製造・流通

ビジネスプロセスの変革を優先している。基盤となる技術を刷新するだけでなく、業務に効率性とインテリジェンスを組み込むことを重視している。

全セクターを通じて、IDCは企業の期待に一貫した変化を観察している。ビジネス上の成果が主要な購買基準になりつつある。技術的な能力は当然のこととして見なされ、価値の創出が差別化要因となっている。

今、勝てるポジションを築くために

サービス企業にとって、競争上の必要性は明確だ。この市場で勝利する最良のポジションにある企業は、次の三つを実行する。

1. レガシーモダナイゼーションの実績を体系化する

過去の案件は活用されていない資産だ。サービス企業は、達成したビジネス成果——コスト削減、リードタイムの改善、AI対応力の解放——を体系的にまとめた資料を構築し、これを市場への訴求の核にすべきである。

2. AIの時代に向けた業種別のリファレンスアーキテクチャを開発する

汎用的なモダナイゼーションの提案は説得力を失いつつある。企業は自社のセクター、規制環境、そしてAIへの志向に合わせたシステムアーキテクチャと実装ロードマップを求めている。

3. 需要に先行してアプリケーションモダナイゼーション能力に投資する

リホストの波は既にピークに差し掛かりつつある。高い利益率をもたらす機会——リライト、リファクタリング、リビルド——がその後に続いている。クラウドネイティブとマイクロサービスの深い能力を培ったサービス企業こそが、2030年に向け企業から選ばれる存在となる。

IDCが提供するレポートのご紹介

IDCでは、国内ITモダナイゼーション市場の動向を詳細に分析したレポートを発行しています。

本調査レポートは、IDCの国内サービス市場予測における主要な成長促進要因の一つであるレガシーシステム(老朽化・陳腐化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム)のITモダナイゼーションについて、市場規模の中期予測を示すと共に、国内企業(ITバイヤー)の取り組み動向や、それを支援するサービスベンダーの動向を分析しています。国内ITモダナイゼーションサービス市場予測では、サービスセグメント別、実行タイプ別(リホスト、リライト、リビルド)、システムタイプ別、産業分野別に予測しています。これらの分析から、国内企業のITモダナイゼーション支援におけるニーズ変化や市場機会、サービスベンダーの支援サービスの特徴や戦略を包括的に把握できます。

関連する調査やご相談について

より詳細なインサイトや市場動向については、当社アナリストへお気軽にご相談ください。

Masaru Muramatsu - Senior Research Analyst, Software, Services, and IT Spending, IDC Japan - IDC Japan

Masaru Muramatsu is a senior research analyst, responsible for research and analysis of the Japanese IT services market, including IT consulting, systems integration, business services. Prior to joining IDC, Masaru worked to help digitalize local government in Japan, implementing software as a service (SaaS) in the education and taxation sectors. He also acquired experience in domestic and international sales/marketing with his work for a company that provided materials for electronic devices like smartphones, PCs, and printers. Masaru Muramatsu earned a master’s degree in engineering from Chuo University, Japan.

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