最新の関税動向は、世界のテクノロジー・サプライチェーン全体にコスト圧力と不確実性をもたらしています。日本企業にとっても、部材調達・生産・組立・物流が複数国を跨ぐことが多い中、関税変更は価格戦略やサプライチェーン設計の見直しを迫る要因になり得ます。
IDCでは、Simon Ellis(製造・サプライチェーン担当 グループバイスプレジデント)と、Phil Solis(コネクティビティ/スマートフォン向け半導体担当 リサーチディレクター)が、最新の関税動向がテクノロジー・エコシステム全体の価格、製造戦略、長期投資判断に与える影響を以下のように議論しています。
原文:2026年2月25日公開(英語)|日本語版監修: 寄藤 幸治
直近の最大課題は「不確実性」
最高裁判所が過去の一部関税を「適法ではない」と判断する一方で、新たな関税が導入されつつあります。その結果、コストへの影響(エクスポージャー)は残り、より大きな課題として浮上しているのが予測不能性です。
「こうした事柄について、明確さがほとんどありません。月曜日に真実だったことが火曜日には真実ではなくなる。企業が取り組むべき構造的な対応は、数分、数時間、数日、数週間で終わるものではなく、数か月、場合によっては数年かかります。だからこそ、何が正しい判断なのかが見えにくいのです」
– Simon Ellis(IDC)
製造業やサプライチェーンのリーダーにとって、設備投資、調達先変更や地域的な分散といった構造的な意思決定は複数年単位の時間軸で行われます。政策の方向性が短期間で変わる環境では、企業は「進める/延期する/追加リスクを受け入れる」といった選択の中で、難しい判断を迫られます
変動局面で問われる「価格設定の慎重さ」
関税によるコスト影響は、スマートフォン、PC、サーバーに影響するメモリ価格の上昇など、他のコスト圧力の上に重なります。
「これらの関税が当面続くと考えるなら、その分を織り込んで価格は高くなるでしょう。価格を下げてから、また上げ直すのは難しい。あまりに混乱が大きすぎます」
– Phil Solis(IDC)
価格の意思決定は容易ではありません。コストが上がれば、通常は価格にも反映されます。一方で、コストが下がったとしても、価格が同じペースで下がるとは限りません。追加関税が継続する可能性がある環境では、企業は「いったん値下げして後で値上げに転じる」ことを避け、価格対応に慎重になりがちです。
国境を跨ぐ複雑性と「関税の積み上げ(Tariff Stacking)」
現代のテクノロジー製品は、最終製品になるまでに複数回国境を跨ぐことが一般的です。たとえば半導体が輸入され、モジュールに組み込まれ、サブシステムに統合され、最終製品として組み立てられる―という具合です。
各段階で追加のコスト影響が発生し得るため、関税は「積み上げ」の形でバリューチェーン全体の価格圧力を増幅させます。複雑なグローバル供給網を運用する企業にとっては、コスト管理とコンプライアンスの両面で、部材・製品がどの法域を通過したかを追跡・トレースする重要性が高まります。
効率とレジリエンスのバランス
パンデミック以降、企業はサプライチェーンの効率性とレジリエンスの間で、継続的な緊張関係に直面してきました。関税は、そのバランスに加わる新たな混乱要因です。
マルチソーシングや余剰能力の確保によってレジリエンスを高めれば、リスクは下がる一方で追加コストが生じます。テクノロジー領域の意思決定者は、「どこに柔軟性が不可欠で、どこは効率を優先できるのか」を見極める必要があります。
次の一手をどう選ぶか
主要な製造・インフラ投資は、10年、20年といった長期の時間軸で決まることが少なくありません。短期的に政策が揺れ動く環境では、長期計画は一段と複雑になります。
テクノロジーベンダー、製造業者、そしてテクノロジーバイヤーに共通する中心課題は、不確実性が続く中でも、規律ある意思決定を維持することです。
最新の関税動向が今後数か月のテクノロジー市場に与え得る影響について、IDCのより詳しい見解は、記事内の対談(動画)をご覧ください。
原文:2026年2月25日公開(英語)|日本語版監修:寄藤 幸治
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